はじめに
僕は、すべての子どもが毎日笑顔で暮らせる社会にしたい、と思って詩を書いています。しかし、そんな社会は子どもたちの周りにいる大人たちが幸せでないと実現しない、と思うのです。だから僕は、すべての子どもとすべての大人の幸せのために詩を書いています。
イクメンという言葉を近頃よく耳にします。そんな言葉のなかった1989年に、僕は一人息子の守を育て始めました。その2年前に病気で事務職サラリーマンをやめた僕は、「もう書くしかない!」と自宅で家事などをしながらの文筆修行に入ったのです。1988年の秋、就職して半年ぐらいの添人(そいびと)、道子さんが初めての妊娠をしたのでした。欲しくても欲しくてもできなかった子どもが、結婚10年目にできたのです。友人に生活費を借金し、息子が2歳になるまでは添人も家に居て、2人で子育てをしました。2歳になったのを機に、添人は働きに出て、僕が子育ての主担者になりました。
保育所・幼稚園への送迎から始まり、高校卒業まで、学校との連絡や懇談などを僕がやりました。おやつを作ったり、野球やランニングなどの相手もしましたし、家庭学習の面倒も見ました。もちろん、学校行事には夫婦で参加しましたし、添人が休みの日には3人で遊びに出掛けたりもしました。息子はすくすく育ちましたが、しっかり反抗期も迎えました。そんな子育てをする中で、僕はすべての子どもの幸せを願うようになったのです。
すべての子どもの毎日の笑顔を目指していますので、いじめ・児童虐待・自殺・ストーカー・DV・性暴力などを防止するための詩も書いています。僕は、自らの詩的感性を表現する現代詩作家ではありません。子どもの幸せのために、すべての人の幸せのために伝えたい思いや考えを、詩という表現で届けようとしているだけの人間です。
この詩集には、2011年3月11日に発生した東日本大震災の被災者の方を思いながら書いた4編の詩と1編の歌詞が入っています。116ページから119ページまでの4編の詩は2005年4月25日に発生したJR福知山線脱線事故を受けて書いた詩です。「8月6日」という詩も併せて、決して忘れてはいけないことを言葉で刻み込むのも詩の役割だ、と僕は考えています。
102編の詩が、みなさんの幸せに役立つよう、心から願っています。
2012年春 髙木いさお