2014年10月


某日> 10月26日に前衛美術家の赤瀬川原平氏が亡くなられた。尾辻克彦のペンネームで小説も書いていた赤瀬川氏はユーモアを絶やさない方だったようだ。病気療養中のコラムで氏は、「病気をくぐり抜けた人の話は面白い」「貧乏を知らない人の話はいまひとつ味わいがない」と書かれていたそうだ。僕もこの2つの経験は、芸術家、特に物書きにとって深い意味を持つものだと思っている。大病を患った人間は、自分の生き死にを真剣に考える日々を通して生命の意味、人生の意味を深く考えることができる。明日からどうして食べていこうか、という貧乏を経験した人間も、生きることの大変さを通して人生の意味、他者との関わりについて深く深く考えることになる。だからこれらの2つともを経験した人なら、経験しながら真剣に考えてそれらを乗り越えてきた人なら、表現力を磨いて本物の物書きになることが可能だと思う。かつて僕が考えた“詩人になる条件”というのがある。

 

①大病を経験した

②貧乏を経験した

③誰かに愛されて育った

④深い恋愛経験がある

⑤人が大好きだが、誰とでも適当に付き合うということはできない

⑥食通である(味が分かる)

⑦長年の趣味がある

⑧映像と音楽を好む

⑨読書が大好きである

⑩書くことが大好きである

⑪物事を論理的に考える

 

というものだった。詩人というのを物書きとしてもよいと思う。これらの一つ一つに僕なりのきちんとした意味があるのだが、長くなるので割愛する。これらのどれかが欠けてもいけない気がしているが、①と②については、少なくともどちらか一つは絶対に必要だと思っている。どちらも経験していない人には本物の詩は書けないだろう、と僕は思っているのだ。

 

 

某日> 8月にAちゃん、Kちゃんと行った京都の『ベルクール』へ添人の道子さんと行った。8月の月記で「オーナーシェフが代替わりした」と書いたが、それは誤りだった。オーナーは松井氏のままで、シェフが白波瀬氏に替わっただけということだ。僕は白波瀬シェフに替わってから5回ほど行っていると思う。ランチが税込3200円から3800円に上がったけれど、料理の見た目が豪華になっているので、前の価格でやってほしかったが、まあ納得して通っている。僕は食べることが大好きなので、20歳頃から京都と大阪のいろんな店へ食べに行った。もちろん食中、食後の感動を求めているが、感動させてくれる店とはなかなか出合えない。だから、「喜びがある」「感心させられる」というところで“いい店”の認定をしているのである。感動をさせてくれる店だって、いつもいつも感動があるわけではない。しかし、そんな店は感動のない日も、喜びを与えてくれたり、感心させてくれるのだ。そこで白波瀬さんの『ベルクール』だが、まだ感動はないが喜びや感心があった。「あった」と過去形にしたのは、今回はそれらがなかったからだ。添人は3度目の新ベルクールに失望したようだ。僕もがっかりしたのだが、一度のがっかりで失望はしない。あの松井シェフが店を任せたほどの白波瀬さんなのだから、きっと頑張って一段一段階段を上がっていかれると思う。読み手の感動を目標にして書き手が誠実に真剣に書くように、白波瀬さんも食べ手の感動のために、素晴らしい作り手になってください。

 

 

某日> 抜粋版を今までに何種類くらい作っただろうか。今現在は5種類の抜粋版があり、講演会用とか書店さん用とかで使い分けている。その5種類は、かつてのA6サイズで8ページというものではなく、B 6サイズの16ページにして、出版している詩集のサイズに合わせている。絶版にしたノア版の『詩集・愛することと優しさについて』はA5判ハードカバー。『子ども大好き!! 四つの力を育てよう』は四六判ハードカバー。それ以外の6作品はすべてB 6判なのだ。そのB 6判に合わせることで、僕の詩集を読むような体験をしてもらえるかなあ、と思ったのである。ページ数を倍に増やしたのも、多くの詩を読んでもらいたかったからだ。僕が詩を書いているのは、読んだ方が幸せになるように、読んだ方が周りの人々の幸せのために行動するように、ということを願ってのことなのだ。幸せな人が増えることが、幸せな社会、すべての子どもが毎日笑顔で暮らしている社会になることにつながっている。そう考えて僕は詩を書いているのだ。だから僕は、僕の多くの詩を沢山の方々に読んでほしい。そのために抜粋版を作って沢山の方々にお渡ししている。そんな抜粋版なので、「私も抜粋版を広めて、詩集も広めたい」と思ってくださった方は子ども出版までご連絡ください。抜粋版を作るボランティア、抜粋版を配るボランティア、どちらも募集しているので、よろしく!!

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