僕は映画愛好家です。少年時代には映画評論家か映画脚本家になろうと決めていたほどです。結局は詩人になりましたが、今までに観た映画は10月末日で1万0523本になりました。
実は、もう1つ別の肩書を青年期に考えたことがあります。演技評論家というものです。僕は、俳優の演技力が映画のリアリティーの大きな柱だと考えているので、映画を観るときは俳優の演技をチェックしています。
監督の演技指導もあるはずですが、監督の要求に応えられる演技をすることはプロの役者としては当然のことです。僕が素晴らしいと感じるのは、監督の想像や期待を上回るほどの演技を見たと感じたときです。
こんな僕が、今、日本一の俳優だと思っているのが、岸部一徳さんです。先日読んだデジタルTVガイド12月号に、「大切にしていることは、常日頃から『物を見る、人を見る、世の中の流れを見る』ことくらいかな。」という岸部一徳さんの言葉がありました。
僕はこの岸部さんの言葉を読んで、見ることを大切にしているからこそ、見られる演技が充実しているのだ、と納得しました。
これは映画ではないのですが、久世光彦演出の向田邦子原作のテレビドラマで、岸部さんと田中裕子が二人で笑い合うシーンがありました。本当にリアルな二人の笑いに感動しました。小津安二郎監督の『麦秋』の杉村春子と原節子の会話シーンに並ぶ、忘れられない素晴らしい演技でした。もちろん相手役にも力は要求されますが、相手役の最大限の力を引き出す力が杉村春子や岸部さんにはありました。こんなふうに、相手役や周りの役者の演技の質を高めるのが、名優の力というものです。
岸部さんは、脇役として主役をサポートする楽しさの中で演技を味わっているからこそ、あの名演技になるのだと思います。主役になりたいが今はまだ脇役、というのではなく、主役を輝かせる楽しさがたまらない脇役であるから、あの名演技なのだと思います。ザ・タイガースのベーシストだった岸部さんは、低音部を担当することで、メロディーの美しさに奥行きを持たせるベースの役割と、その素晴らしさに気付いたはずです。そのことが、映画に奥行きを感じさせる岸部さんの演技につながっているのでしょう。
初めに日本一の俳優だと言いましたが、世界中の俳優を見渡しても、名優と呼べる一人が岸部一徳さんです。
☆この春に飛鳥新社から出していただいた詩集『愛することと優しさについて』は、僕の8冊目の詩集です。僕はこれまでずっと、帯の色はカバーと同系色か無色透明にしてきました。8冊目の『愛優』についても、カバーと同じく白色の帯にしていました。ですが近々、色付きの帯に替えることが決まりました。僕は先日、出来上がった新しい帯を『愛優』に付けて見ました。優しい雰囲気の本になりました。書店で手に取った読者の皆さんのご感想が知りたいなあ、と思っています。
☆写真を本格的に再開することを先日お伝えしましたが、そのために購入するカメラが決まりました。富士フイルムのX-E1というカメラです。11月17日に発売されるカメラで、僕はまだ実機に触れてもいないので、絶対に買うとは言えませんが、画質が良さそうなのでこれを買うつもりなのです。レンズ付きで10万円を超える本気カメラなので、僕はすごく楽しみにしています。