２０１１年１０月

　見たい映像がサッと見られることって便利です。でも、まだ観ていない映画でそんな便利を活用することって、すごくもったいないと思います。
　先月のしじん月記で書いた蒼井優の『花とアリス』のダンスシーンが、YouTubeで見られるようになっています。こんなふうに、沢山の映画のあるシーンがネットで見ることができます。それを本編を観ていない沢山の人々がチョイ見するのです。
　素晴らしい映画には、特に素晴らしいシーンがあるものです。でも、そのシーンだけ見ても感心なり驚きなりがあるだけで、もちろんその映画を観たことにはなり得ません。映画愛好家の僕が〔もったいない！〕と思うのは、そのシーンを本編の中で観ることで得られる大きな感動を体験する機会を、チョイ見することで失ってしまうことなのです。チョイ見した後で本編を観ても、薄められた驚きと薄められた感動があるだけなのですから。
　ですから、誰かに「あれは名シーンだ！」と聞いて関心を持ったら、すぐに本編を観てください。チョイ見って、誰かと付き合うときに自分の都合のいい部分だけで付き合うみたいで、すごくビジネスライクというか実務的 なのです。ビジネスでの付き合いならそれでもいいのでしょうが、恋愛ならどうでしょうか。少なくとも〔映画が大好き！〕と思っている方には、映画のシーンのチョイ見はしないでほしいのです。だって映画が大好きなんでしょ。

　補足です。先日、TBSテレビの『ニッポン大女優伝説』第三回を見ました。ネタギレなのか、男優の伝説も紹介されていたのです。その中で三船敏郎主演の『椿三十郎』のラストの決闘シーンが放映されました。あの有名な決闘シーンです。
　あのシーンをチョイ見させるテレビ局と、それを許可する映画会社には、言うべき言葉がありません。

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