百店の書店さんに出会いたいと思っています。全国には、約1万7000書店があるそうです。しかし、地方小出版流通センターさんを通しての買い切り販売しかしていないような子ども出版では、多くの書店さんと素的なお付き合いをしていけません。そうなんです。僕は、僕個人としても、子ども出版としても、書店さんと素的な関係を築きたいのです。僕の書く詩が大好きで、僕が作り、子ども出版から出している詩集が大好きな書店さんと、素的な関係を持ちたいのです。もちろん、書店が僕の詩を好きにはならないのは分かっています。僕の詩を好きで、僕の詩を大切に売っていきたい、と思ってくださる書店員さんの居る書店、という意味です。そんな書店が、全国に百店あればいいなあ、と思っているのです。僕の出ているすべての詩集を毎月各1冊以上売るのを目標にしてくださるような書店が、全国に百店もあったらいいのになあ、と思っているのです。こんな夢みたいなことを、近頃よく思っています。本を商品としてしか見ないから、ただ売れればいい、売れる本がいい本だ、みたいに本を扱う書店には、僕の詩集は合わないと思うのです。本を消費者に売りたい書店員さんじゃなく、本を読者に届けたい書店員さんの居る書店に、僕の詩集を並べていただきたいのです。実は、そんな書店さんとはまだ出会っていません。最初の1店目が、どこのどんな書店さんなのか、ずっと楽しみに待っているのですが……。
滝田洋二郎の映画『おくりびと』がアカデミー賞を取りました。日本でも多くの賞に輝きました。キネマ旬報ベスト・テンでも、2008年のベスト1位になったのです。滝田洋二郎の映画を初めて観たのは、梅田のピンク映画館でした。彼の名も映画のタイトルも忘れましたが、画面中央に映し出された「脚本・高木功」という画面に驚いたのがつい先日のような気がします。でもそれは、25年くらい前のことだと思います。僕の本名は高木功だから、この画面を見た時、〔きっと昔の知人なら、これを僕だと思うだろう……〕というのが頭に浮かびました。氏名が同じであるだけではなく、僕の映画好きは皆に知られていたからです。後に知ったことですが、この高木功氏が行かれた大阪シナリオ学校には、僕も行きたくて、入学案内を郵便請求して持っていました。ピンク映画時代の滝田氏は、高木氏とコンビを組んで面白い映画を連発していたのです。特に、1985年の『痴漢通勤バス』はピンクコメディー映画の秀作です。妻とも2回以上ビデオで観ました。その妻は、アカデミー賞受賞のニュースを聞いた時、「アメリカ人が『痴漢通勤バス』を観たら喜ぶやろうね!」と言ったのです。最近の大金をかけたスペクタクル映画を見慣れたアメリカ人(日本人も)に、あのチープな映画作りの中にある映画人魂が分かるだろうか、とその時僕は思いました。
また映画の話です。「映画人魂」という言葉で思い出しました。昨年の4月に『うた魂♪』(田中誠監督)という映画を観ました。僕の評価は4.5点(7点満点)でした。しかし、欠点もある映画ですが、青春の感じられるさわやかな映画でした。僕なら、ベスト・テンの9位か10位には入れておきたい映画です。ところが、映画評論ベストテンの50位、キネマ旬報ベスト・テンの89位でした。あまりにもヒドイ評価なので、ここで一言言っておきます。『うた魂♪』は面白い青春映画です。小学校の4年生から中学生の間に観てほしい映画の1本です。このさわやかさを感じ取れない評論家の多いことが、50位、89位という結果なのだと思います。こんなところからも見えますが、賞やベストテンなどというものは、ちょっとした参考にしかなりません。だから評論家の説や流行っている、人が入っている、売れている、などということに振り回されないようにしてください。